アベノミクス再考

この記事は7分で読めます

mike

先日日銀の追加緩和が発表されたので、

ここで改めて「アベノミクスとは何か?」をおさらい
しておくのもいいんじゃないかなーと思いまして。

あまり具体的なところまでは突っ込めませんが、
とりあず全体像が見えるように骨組みをおさえてもらえればと思い

ます。

いや、突っ込めることは突っ込めるんですが

細かい部分よりもまずは全体像を掴むほうが先だろうということで

そっちを優先します。

とりあえずアベノミクスとは何か?を知っておくだけで

今回の追加緩和にしても、

その大きな枠組みの中における「意味」も見えてきますので、

結果的に世の中の動きが何となく掴めるようになってくるはずです

また今後の日本が向う先というのも
ボヤッとかもしれませんが見えるようになってくるでしょう。

さて、先日の追加緩和ですが、

あれはアベノミクス的に言うと第一の矢、「金融政策」になります。

この辺はほとんどの人にとっては朝飯前でしょう。

で、金融政策以外にあと2つありますよね。

何でしたっけ?

書いちゃますが

第二の矢が「財政出動」、

第三の矢が「成長戦略」ですね。

第一の矢「金融緩和」はアメリカがやっていたQEなどと同じで

実はアベノミクスだからといって特別なことをやってるわけではありません。

従来通り金融機関から国債を買い取り、
日銀当座預金の残高を増やす(マネタリーベースを増やす)政策です。

ただこれまでより金額が圧倒的にデカイというのがポイントですね

続いて第二の矢「財政出動」ですが、

政府が積極的におカネを投下することで需要を増やし
景気回復の起爆剤的な役割を果たすのが目的です。

俗にいう「公共投資」ってやつです。

景気回復するためには誰かが「きっかけ」を作る必要があるわけですが
デフレ下の日本ではその役割を果てせるのが一応政府だけなので、

政府が頑張って需要を作り出すわけです。

これも別にアベノミクスだからこその政策というわけではなく、
考え方としてはケインズの「有効需要の創出」と同じで昔からある王道の政策です。

言ったらラベルを張り替えると別物に見えるってだけで

第一の矢も第二の矢も王道中の王道の経済政策なんですよ。

めっちゃ有名。いろんな国がやってます。

第三の矢の「成長戦略」は
実は掘っていくとかなり細かくあれやこれやあるのでここでは詳細は書きませんが、

ざっくり言うと第一と第二の矢が飛行機を飛ばすための政策で、

第三の成長戦略は離陸した飛行機が墜落しないように「飛ばし続ける」
ための政策というイメージでOKです。

成長戦略と一口に言っても

例えばカジノとか、カジノとか、カジノとか

TPPとかTPPとかTPPとか(笑

(カジノ案に関しては真っ向反対してるわけではありませんが、
賛成ってわけでもないです。TPPは・・・)

まあ色々あるのですが、

ざっくり言いますと

主に「規制」を「緩和」することで新規参入を施して
成長を促進させようってーのが今のところ主流の流れになってます

「参入障壁を取っ払う」という言い方もできますね。

例として成長戦略の規制緩和策をいくつかあげますと

・ホワイトカラー・エグゼンプション

⇒ 労働時間の規制を外す(別名残業代ゼロ制度)

・労働者派遣法改正

⇒ 派遣労働者の雇用期限の緩和

派遣社員を三年以上雇用できるようにするもの

・TPP

⇒ 国境を超えたあらゆる参入障壁の全撤廃

・法人税減税

⇒ 文字通り法人の減税案

・カジノ

⇒ 賭博合法化でカジノ運営の実績がある外資の誘致

・固定価格買い取り制度

⇒ 民間企業が発電した電力を電力会社が固定価格で買い取る制度

さらに農業、医療、移民分野でも規制緩和が予定されてます。

とまあこんな感じでずらーっと載せてみましたが、
まだ他にもたくさんありますので興味あれば調べてみてください。

さて

ここでもう一度アベノミクスが全体としてどういう役割を
果たすべきと期待されているのか、

俯瞰してみてみましょう。

まず日銀が量的緩和によって金融機関の国債を買い取って
マネタリーベース(日銀が供給するマネー)を増やす。

次に当座預金残高が増えて貸出枠が大きくなった銀行などが
個人や企業へ貸し出しを増やし、

世の中に循環するおカネの量を増やす。

これを「マネーストックを増やす」と言います。

さらに政府が公共投資をするために建設国債を発行し、
それをおカネが増えた金融機関に買い取ってもらうことで
財源を確保する。

その財源を公共事業に投下して需要を作り、

おカネが世の中をグルングルン回る状態を作り出す。

そして成長戦略でこの循環を加速、成長させる。

これが一応アベノミクスの理想的なストーリーなんですが

実はよくみるとおかしいところがあります。

これはすでに巷でいろいろな人が指摘してますが、

どこがおかしいかわかりますか?

まずそもそもアベノミクスは「デフレの脱却」を目標としてますよね。

で、そもそものデフレの大きな要因は

不況、もしくは皆が不況だと思い込んでいることで

需要が供給を下回っている状態が続いてカネの循環が滞っているか

なんですが、

これを解消するためにはひとまず「需要」を増やすことが
最重要項目になりますね。

そう考えると

第一の矢でマネーの供給量を増やし

第二の矢でそのマネーを公共事業にぶち込むというのは

デフレ下で必要な「需要を増やす」という意味においては正しい政策になります。

が、しかし

第三の矢である規制緩和は

「参入障壁を取っ払う」ことで新規参入を促進する

つまり「供給」を増やす政策なので、

ベクトルとしては第一と第二の矢とは真逆になるのです。

デフレ脱却のためにまずは需要を増やさなきゃいけないのに、
なぜか同時に規制緩和で供給を増やそうとしてると。

「これっておかしくねーか?」と巷で騒がれてるわけです。

さらに新規参入が増えるということは
価格競争が起きてデフレ圧力が強まる可能性もあるので、

ここもインフレを目指すアベノミクス的には

「矛盾してんじゃねーの?」

と言われてます。

これに関しては一応規制緩和をする「根拠」というものがあるのですが、

それは

「様々な業界における保護や新規参入障壁が経済の
発展を妨害している

だからそれらを取っ払えれば経済成長するだろう」

という公理です。

これ、一見正しく見えますよね。

もちろん例えば供給が足りない環境では有効な可能性がありますし

規制そのものを取っ払うことでチャンスが増えるという側面もあります。

ただし規制を取っ払うということは同時に

「全員が同じ土俵で戦う」ということも意味するのです。

例えば僕がやってるキックボクシング。

あれって階級制なんですが、
階級があるからこそ逆に「フェア」な戦いができるわけですよ。

同じくらいの身長

同じくらいの体重

の相手と勝負するわけですから。

でも規制緩和というのはいきなり

「階級制をやめて無差別級にします!」っていうのと同じことなのです。

バンタム級とヘビー級が同じリングで戦うことになるわけですが、

それって僕がマイク・タイソンと試合するようなものです。

いやいや絶対ブチのめされますって(笑

たぶんパンチ一発でリング外に吹き飛ばされるでしょう。

つまり同じリングに最軽量から最重量級の選手をどわーっとまぜこぜにすれば
その中で一番強い選手、

というか「デカイ選手」が一人勝ちするわけですね。

それってフェアと言えますか?

もちろん

「全員同じルールでやるんだからフェアだ!」とも言えるかもしれませんが

その反動として勝者は1人、
残りは全員敗者という究極の二極化が起こります。

これを別の言葉で言い換えると

「グローバリズム」とか

「資本主義」になるわけですね。

ちなみに安部首相が規制緩和を進める理由を

「安倍政権がアホだから」

「安倍晋三は何もわかってないド素人」

と共通の敵を作って煽り倒してる人もいたりするわけですが、

個人的に「安倍政権がアホだから」という結論で片付ける
のは非常に危険というか、

それこそまんまとハメられているわけで、

重要なのは「なぜ」一見矛盾するようなことをしているのか?
ということをあらゆる視点から考えることが大事ではないかと思うわけです。

でないと本来見えるものも見えなくなってしまいますよ。

そもそも僕でも理解できるようなそんな矛盾を安倍首相及び
その側近が気づかないと思いますか?

そんなわけないでしょう。

絶対知ってますって(笑

じゃなんでそんな重大な事実を知っている(可能性がある)にも
関わらず矛盾するようなことを続けてるのか?

実は僕が思うにここが今後の先行きを占う上で

非常に重要なポイントになってくるんではないかと思ってます。

矛盾することをあえてするということは、

そこには必ずそれなりの「理由」が存在するのです。

で、その「理由」はたぶん今後僕らにも非常に密接に関係してくる
だろうということですね。

一応現時点での僕なりの推論はあるのですが、
それはまだここに書けるほど熟してないのでまた今度にしておきます(笑

今後のアベノミクスの動向を追っていく時に
上記のことを頭に入れておくだけでたぶん見える範囲は広がるはずですので、

覚えておいて損はないでしょう。

そうだ、追加緩和のことも書くつもりだったんですが、

忘れてました。

一応最後に触れておきます。

10月31日に黒田日銀総裁が追加緩和の内容をサプライズ発表しました。

詳しい数字は調べてほしいのですが、

とりあえずマネタリーベースの額をさらに増やすことになりました

とはいっても

ただ単にマネタリーベースが増えるだけでは日銀の
当座預金が増えるだけで世の中のおカネは増えません。

世の中のおカネが増えるためには、

さっきも書きましたけど銀行が個人や企業に貸し出して、

その貸し出されたおカネが消費や投資に使われる必要があります。

ただ残念ながら現状マネタリーベースは増えてるものの、
個人や企業の資金需要があまりにも少ないために

マネーストック(世の中のおカネの量)がほとんど増えていません。

ちなみにマネーストックが増えないのは需要がないことに加えて

・中小企業が貸し出しを受けるための保証を得られない

・バーゼルⅢによって銀行の自己資本比率規制が厳しくなって
貸し出せる額が少なくなった

という理由もあるんじゃないかと言われてます。

この辺は僕ももう少し調べてみたいと思ってます。

あ、それと日銀が今回国債の買い取り量を増やしたことで、
政府の借金は実質「減る」ことになります。

なぜなら日銀が世の中に出回っている国債(政府の負債)を
さらに買い取るわけですから。

話を戻しますが

とりあえず日銀の金融政策は今あまり機能していないのです。
(政府の負債が減るというメリットはありますが)

なのでその状況で追加緩和してもマネタリーベースだけが一方的に
増えるだけで、

その分公共投資を増やして消化するとかしないとあまり意味がありません。

当然このことを黒田総裁が知らないわけはないのですが、

にも関わらず追加緩和を決めたのはなぜでしょうか?

とりあえず追加緩和によって円安・株高が加速しました。

円安になるとエネルギーや輸入製品の物価が上がりますね。

で、日銀の目標はインフレ率2%ですね。

エネルギーを含むコアCPIで見れば円安によって物価は上がることになります。

これをどう見るか、ですね。

もちろん色々な解釈があるかと思います。

次に株価ですね。

アベノミクスでは「株価」と「企業」を非常に重視していますが、

今回の追加緩和でその株価が上がりました。

株価が上がると株式を保有している企業の利益は増えます。

企業の利益が増えれば、

もしかしたら「給料」がふえる”かも”しれません。

給料が増えれば消費が増える”はず”なので、
デフレ脱却に効果がある”かも”しれませんね。

といういわゆる「トリクルダウン」を意識したのかもしれません。

してないかもしれません。

はたまた「トリクルダウン」を実践しているように見せているのかもしれません。

もしくは追加緩和をやることで消費税増税の援護射撃
をやったという風に「見せる」ことが目的だったとも解釈できます。

ポイントは本当に援護射撃をしたわけじゃなく、

そういう風に「見せている」ということです。

これもあくまでも可能性の一つですが。

そもそも誰のために?何のためにそう見せる必要があるのか?

この辺りを深堀りしていくとけっこう面白いかもしれません。

ということで、釈然としないまま終わりますが、

今回は意図的にそうしてますので悪しからず(笑

とりあえず今回書いたようなことを思考する際のフレーム
として持っておくといいことあるかもしれませんね~

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る
  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

管理人:海沼


~モノノフの経済学~海沼公式ブログ

もう一つのメインブログはこちら

公式twitterはこちら

公式facebookはこちら
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

最近のコメント

    アーカイブ

    記事の編集ページから「おすすめ記事」を複数選択してください。